なぜ李忠成はドフリーでボレーシュートを撃ったのか

今年初の日記ですね。
あけましておめでとうございます。
 
というより、アジアカップ優勝がめでたい!ですね。事前
準備の整わない中、正直いって最低限の目標はベスト4かなと
考えていました。ザックのやりたいサッカーを選手と共有する
為の貴重な機会を多くする=最低でも3位決定戦まで進み、
6試合やる、という意味で。
 
中東ならではの「よくも悪くも小賢しい」雰囲気に満ち満ちて
いたこの大会。審判のレベルの低さは深刻ですね。アジアの
競技レベル向上を阻害する大病原になるかも知れない。
不正は無いと信じたいけれど、疑いたくなるジャッジも正直
多かった。
 
中東諸国の選手は、どこを目指してプレーしているのやら。
特にサウジとカタール帰化選手以外)、UAEあたりは
持続的にコンペティションを勝ち抜く為のノウハウを
どこでどうやって学ぶつもりなのでしょう。苦境を克服せず
負けが見えてくると淡白になるメンタリティの改造が
必要な時期かも知れない。もっとも、自国リーグで大金を
もらえているうちは、選手にそんな素養つくはずないか。
 
こうなると、中東でも資金力にモノを言わせない向きの
国々に、注目は集まるのではないかな。善戦が印象的な
ヨルダン、シリア。アジア屈指のGKを輩出したオマーン
国内情勢により代表強化自体が左右されてしまうだけに、
確信めいた言い方ができないが、今後が楽しみな国々。
 
イランの存在は、イスラム圏では完全に抜け出した感あり。
人口・国力ともに傑出しているわけだし、スペインや
ドイツで選手が活躍しているわけだし、今回は自国の
指導者ゴドビがチームを率いた。日本代表が強くなって
いった構図に近いものを感じます。
 
オーストラリアについては、充実した一世代の区切りに
今大会は位置づくのでしょう。しかし、若手がヨーロッパの
2部あたりからじっくり育ち上がる図式が定番化している
ので、早晩新たな人材が出てくるのではないでしょうか。
次回W杯出場に向けて、まずまずの始動とみるべき。
 
韓国は…相変わらずとてもタフなチームでした。ただ、冷静に
見れば、彼らが本来の動き・魅力を出し切れなかったのは
他ならぬ日本戦だったように思います。変な意識をせず、
パク・チソンに多くボールを触らせる戦いをされていた
方が数段怖かったはず。長谷部の中盤の振る舞いは安定して
いたけれど、今のパク・チソンに繰り返し攻め続けられたら
長谷部ならずとも分が悪くなるんだし。まあ、W杯予選に
向けて、最大の懸案だった「攻撃陣の選手層の薄さ」を
少し克服できたので、優勝はできなかったが彼らにも収穫は
あった大会でしょう。
 
日本の収穫は言わずもがな、コンフェデ杯に出場できること。
これで何の根回しもせずに、ブラジルW杯の前年、世界の
強豪と渡り合う機会を得られたわけです。超プライスレス。
気兼ねなく、今夏の南米選手権には成績を気にせず真っ向
勝負ができることもよい。これも今回と同じ完全アウェー、
しかも格上の相手がほとんど。いい意味で、「負けて得る」
モノを求めて戦ってほしいものです。
 
最後に、表題の件です。あの場面だけ切り取って見ると、
オーストラリアのDFがニアサイドの線を切りに行く判断を
早くしすぎた事でドフリーになった、あの土壇場にきて
とんでもないミス…という見方になるかも知れませんが、
ものすごい伏線がひかれていた事を知っててほしいです。
 
○クロスを上げた長友
・この試合の活躍は凄まじく、あの場面でもスピードで左を
ブチ抜いた。本能的に「ヤバイ」と思わせるには十分だった。
・この試合に限っては、「何度か中に持ち込んでいた」事実。
あの場面では、ゴールライン際を抉る選択肢が有った。
・「速い、低めのクロス一辺倒」で、試合を通じハイボール
上げる素振り、動機に乏しかった。
○合わせた李(と、直前に交代した前田)(と岡崎)
・ほとんど使われず、ゆえにコンディション劣化がなく、
練習のイメージを持ち込むことができた。相手に合わせず、
本当に基礎的な「マークを外す動き」を単純にやった。
・基本的に、五分五分のシュートについては前田が「ほぼ全て
外していた」事実。サウジ戦は参考外だったと考えれば、
FWとして仕事を完遂できたのは韓国戦の一発のみ。しかも
アレについても長友が抜け出した時点で8割方決まりの得点。
交代選手といえども、怖さを覚えるFW陣容ではない。
・ただし、「体を張り、競る」ことを前田は100分しっかりと
やっていた。オージー目線からいえば、つまるところFWは
競る役割で、ゴールを決める役割は別の人間に与えていたのが、
前田が居た時間帯での印象。
・あの場面で最も怖いプレーヤーは岡崎、この試合でも惜しい
ヘディングを一発披露していた。しかしこの場面、ゴール前へ
駆け込もうとしている途中で、プレーに絡めていなかった。
オージーが本当に警戒していたのは、「長友切り返し右足で
クロス→動き直して飛び込む岡崎」のパターン。
○組み立て(遠藤、本田)(と岡崎)
・ひとつ前の場面で、本田からの浮き球パスで、左サイドを
一度使った、その後長友が遠藤に戻し、また左で仕掛け
直した。攻撃をビルドする二人が、粘り強く「左の突破に
注力」した結果と言える。
・長友が切り返せば、遠藤へのパスが可能だった。ワン
タイミング遅れても、精度の高い遠藤が蹴れば、守備側は
しんどい。ワンタイミング遅れたことにより、ゴール前に
詰める人数が増える…ここでもやはり「岡崎が怖い」。
○DFの疲れ
・内田と吉田が限界。もし右に回しチャンスを作ったとしても、
むしろカウンターを食らうことの方が心配。彼らの「攻め
上がりを自重させる」意味も込め、左での攻撃に固執した。
オジェック(相手の監督、元浦和レッズ
・なまじ日本の選手を知っているだけに、「良さ(中盤)を
消しにかかり過ぎた」感あり。1VS1の力勝負の選択肢を
選手の意識から遠ざけ、突破を仕掛けた長友に対して、
後手に回る遠因を作ったのではないか。
○香川、松井の不在
・前者はイメージ溢れるワンタッチコントロール、後者は
トリッキーな仕掛け、微妙に異なる持ち味ではあるが、
プレスの厳しいエリアで「ゴールに向かう特性ある選手を
二人も欠いていた」ことは、結果的にオージーのDFに
その手の警戒心を一瞬ながら欠如せしめた。
○本田の日頃の言行
・『持ってる』等で御馴染みの若きスタープレイヤーに、
オージーは一杯食わされた格好。本人は中盤からマークを
引き連れてゴール前に突っ込む…はずの場所に居たにも
関わらず、クロスに飛び込まなかった。長友の動きに
呼応していなかったのが最大の理由だが、コボレを期待し
エリア外で待ち構えた構図だろう。結果的にマーカーを
釘づけにして、ゴール前がポッカリ空いた。本田の
「独特の存在感」なくして、これだけの大穴が生じる
場面ではなかったはず。

 
と、いろいろ邪推交えて書きましたが、なによりもこうして
優勝を決めたゴールについて延々語れること自体、本当に
喜ばなくてはなりません。素晴らしい優勝、ありがとう。