スイス 3−4 日本

愛すべき泥試合。
  
冷静に結果だけを抽出してみよう。
オシム体制の日本ナショナルチームは、当初の
ざっくばらんな選出⇒試用の時期を経て、アジア
3連覇は逃したものの、一年経過時点で「スイスを
敵地で撃破」という結果を手にしたことになる。
この場合のスイスには「翌年のEURO開催国」という
修飾辞が付加され、その意義をより濃くする。
  
S・フレやシュトレラー、フォーゲル等、スイスは
試合に出ていない一線級の選手がいるため、フル
メンバーではなかった。だがそれでも、日本には
十分すぎるほど手強い選手を揃えたチームである。
事実フォンランテン、マニンのサイド攻撃には
何度も後手に回った。プレミア屈指のストッパーに
成長したセンデロスと対峙した巻は、60分以上
まともにボールを触ることすらできなかった。
長期に渡り指揮を執るクーン監督のコンパクトな
フィールド使いも魅力的、彼らのサッカーが成熟を
迎えている印象を抱かせた。2−0で折り返した
45分の時点で、勝負は決したように見えた。
  
だが日本は冷静だった。
   
正確なロングパスを駆使して劣勢を跳ね返しながら、
左サイドからの攻めに活路を見出していた前半の
方向性をそのまま活かし、駒野が完全に左を制圧
することに成功。スイスは後半から入ったヤキンと
バルネッタが不出来、特にヤキンはセットプレー
以外はどこにいるのか全く分からない状態。やや
スイスの自滅含みながら、ポゼッションを急激に
回復した日本は松井のドリブルからPK、左で得た
フリーキックを中村⇒巻で決め同点に追いつく。
ここから巻は突然目を見張るような動きを始め、
またしても左から上がったクロスに競り合うと、
完全に遅れた相手DFのファウルを貰いPK。中村が
冷静に沈めて逆転。強いDF相手に渡り合い結果を
出した巻、今日のプレーはエースそのものだったと
いえる内容。
  
実はこの3点、すべてスイスはベーラミが応対
している。ラツィオで確固たる地位を得ている
彼だが、今日は空回りしてしまった。とはいえ
そんな実力者を食って3点叩き込んだわけだから、
十分に自信持っていい。
  
ここからは血眼のスイスとがっぷり組み合う展開。
交代で入ったジュルーが同じく交代で入った矢野を
振り切ってコーナーキックを体で押し込み同点、
やはり一筋縄ではいかない。新潟サポーターには
悪夢のような光景だっただろう。
  
しかし最後にその矢野がこぼれだまを豪快に叩き
込むのだからサッカーは分からない。90分間
ずっと微妙だった相手FWエンクフォに対し、
日本のFWは2人とも重要な仕事をした、それが
勝利につながった。
  
ということで今日褒め称えるべきはFW。巻は
これまでのキャリアで最高の仕事をした。矢野も
それを追いかけるライバルとして最高の仕事を
した。得点を期待できるサッカーをこれから
沢山見せてもらうためにも、彼らにはますます
いい仕事を期待したい。