まるごとバナナ98円

時代は移ろっていて、俺の食の趣向も子供の
頃から比べるとだいぶ変わっている。   
ほかの食品の安売りは当たり前に見つめる
けれど、まるごとバナナにはなんとなく別の
感情を覚える。198円のイメージがどうしても
抜けない。今日びあんなのを198円で売って
いても、きっと売れ数は採算レベルに乗らない
ことだろう。なんとなくそこらへん、安売りの
意図の察しはつく。
 
しかし、なんだか引っかかる。98円のまるごと
バナナ。そんな容易い値段で手に入って良い
商品ではなかったはずだ。デフレ時代を経た
現代と、ノスタルジーにまみれる時代の記憶と
単純に比べてはいけないだろうけど、でも
やっぱり、まるごとバナナは98円でお気軽に
買うもんじゃないと思う。あの商品がかつて
持っていたステイタス感は98円では存在しない。
譲りたくない。
     
でも結局買った。久しぶりに食いたかった。