日本 1−0 スペイン

いやはやすごい時代になったもんだ。
 
技術に差があるから、普通にやったらひたすらボールを
支配され、そのうちに最終ラインを切り裂かれる。
それを何らかの手立てで止めねばならない。今回、
日本が選んだ手立ては、ナショナルチームレベルでは
かつてなかった「徹底的なフォアチェックとハイ
プレッシャー」だった。これが本当に効いた。
 
戦前、スペインのパスサッカーにプレスが間に合わず、
大量失点の危険性あり、という悲観的予想をよく見た。
FIFA大会となると、負けた場合もスコア上は妙に
善戦する日本なので、1点か2点取られ、勝点3持って
いかれるのかなー、スコアレスドローなら上等かなー、
まあ大量失点はないだろなー、という気持ちで観ていた。
 
5分、10分、15分。あまり見せ場のないまま時間が
経過するごとに、ハードルを一つ超えていってる感じ。
20分、25分。日本はまだまだ規律あるディフェンス。
30分経過。このまま無失点で前半終わっていけば、
このチームは一定の賛辞を貰えそうだな…なんて考えて
いたところで、なんと先制。これは驚いた。
 
っていうか、日本の11番が尋常じゃない快速だって
ことはもう分かったはずなのに、あまり対策打って
こないなあ。などと思っていた40分過ぎ、なんと
その永井をペナルティエリア目前で潰したイニゴが
レッドカード。ソシエダで出色のパフォーマンスを
見せていた技巧派DFだが、連携もお粗末な状態で
永井の快速を相手にせねばならなかったのは不運か。
ソシエダ贔屓な俺としてはとっても悲しいが、この
試合だけは、これはもう日本に勝ってもらおう。
シーズン入ったらまたリーガでしっかりやってくれ、
イニゴ。アランブルやプリエトがクラブの象徴な
時代が長かったけど、もうそろそろ君やスルトゥサ
あたりが看板を背負って立ってくれ。
 
などと、ソシエダへの想いを浮かべつつ、前半終了。
 
10人のスペインにどう対峙するのか、おそらく
日本の選手達は、この3ヶ月ほど嘗めてきた辛酸の
味をいま一度思い出し、後半もガムシャラに走る
戦い方を選んだのだろう。そして、それは唯一の
正解だった、ということ。
 
後半のスペインは、俺がサッカーをしっかりと
観始めた頃のスペインとでも言うべき内容だった。
この煮え切らなさ、そして、自陣のバイタルで
妙に大雑把なディフェンス、厚みの無い前線、
ものすごい既視感。
 
しかし彼らは現ワールドチャンピオンだ。もう、
あの頃の彼らじゃない。本当はまだまだ手の内を
隠しているんじゃないか。再三カウンターを
喰らっているのは、固い日本のディフェンスを
少しずつ前おびき寄せる、上物の撒き餌かも
知れないぞ…、全く油断できない…。
 
と思っていたら、なんとそのまま試合終了してた。
大番狂わせが完成。
 
とにかく、この勝利はいろいろと凄い。相手は
ガチメンバー。オーバーエイジでマタとハビ・
マルティネスとアドリアンが入ってる、極上の
メンバー。こちらはゴタゴタしてる間に1枠
オーバーエイジ使い損ねDFに2人入れた、
しかも1人は日本代表常連とは言えない徳永、
さらにガチメンバーと称するに不可欠な香川を
欠き、さらに選出した18人で文句なしに一番
ウマい宇佐美をベンチに置いた布陣。そして
マイアミの時のような泥沼的勝利でなく、
自らのコンセプトをしっかり表現しての勝利。
そこに価値がある。
 
さあ、ポゼッションサッカーへの次なる対抗策は、
この若き日本が提唱した「徹底的なフォアチェック
&ハイプレッシャー」が、世界的な解答という
ことになるのか。もしそうなら、いままさに
そのガムシャラサッカーで勝ち点を積み上げ、
Jリーグの優勝を争っているベガルタ仙台は、
世界のサッカーの潮流作りに多大なる影響を
与えているのかも知れない。
 
そんな妄想も突飛じゃないのだから。
いやはやすごい時代になったもんだ。